かっこいい日記①

朝起きて鏡をみて、顔をあらって笑い出す。
鏡の俺とこの俺に関係はない。
笑ってないて、朝飯をくって憂鬱になる。俺よりも鏡の中の俺のほうがまるで価値ある光であるかのように堂々とアルミの向うで居直っている姿を思い浮かべて、だ。壁の白さもタオルのしわも、鏡の世界に映るものはみなこの俺が知り尽くしているのに、その前に座って俺をじぃっと見てる俺だけは俺の知らないところに俺になっているのだ。

今日で大学が終わる。終わる、というのはやめるとか卒業するじゃなくて、俺が学校という組織に期待していたあらゆる希望が費えて、その希望をたよりに学校にいくことが禁じられる時期にはいるということだ。つまり四年生になるってこと。教育のいい子たちとも遊ぶことも亡くなるだろうし、サークルにもそれほど出入りしなくなるだろう。

 
 むしろこの俺は何をしてきたのだろう。鏡の向うの寝癖の強いニヤニヤ笑いのあいつのほうが俺の顔をして闊歩してきたのかと思うとムカついてたまらないが、回りのやつらはそいつを眺めて俺を判断していたのだろうか。あるいは回りの人間たちはみんな節穴の目しかなくって、そいつのことを俺だと思っているのだろうか。

そうして俺も他人を判断しているのだろうか。俺も節穴なのか。

だから軽く言いたいね。俺がへこんでるからっておまえまでへこむな。かってにかなしそーな顔をするな。勝手に喜ぶな。犬みたいに尻尾を振るな。豚みたいにプライドを捨てるな。

おまえなんてこうだ! っていいながら鏡を殴って、もう少ししたら着替えて、外にでる。